【これだけは知っておこう!】建物の工事着手までの流れ

建物の工事着手までの流れ

その③

設計の仕事

「建物の工事着手までの流れ」は4部構成となっています。

それでは、ご覧ください。

設計者は何をやっているの???

設計契約を締結し、設計者に設計を依頼すれば、あなたは思いや意見をどんどん設計者に伝えていけば、設計者がまとめてあなたの家を具現化して、建物の工事着手まで持って行ってくれます。もちろん建物の工事着手後も、建物が完成するまで設計者は設計監理をして、見届けます。

では、設計者は建物の工事着手まで、何をやっているのでしょうか。

基本設計

まず、設計者は依頼を受けるとまずその土地の情報を整理します。役所や消防署に出向いたり、電話やインターネット等により用途地域・容積率・建ぺい率・高度地区・防火地域等あらゆる情報を収集します。但し、この作業は、設計契約前の基本プラン作成時に実行していることなので、設計契約後は再確認する程度の作業を行います。そして、設計契約後は建築主であるあなたの意見を細かく聞き取ります。だいたい1~2週間に1回のペースで打ち合わせを行い、外観や内観等、どうしたいか、どのように見せたいかの内容を詰めていき、設計図を進めると共に、視覚的に理解してもらうように模型パースを作成したりして建築主の要望に応えていきます。早くて2ヶ月ぐらいでだいたいの全貌が見えてきます。これが基本設計です。この間に、構造設計や設備設計とも協議を重ねて実際に建築できる建物にしていきます。さらに役所等※2にも数回出向き、法規や地域条例等の確認を行います。

※2 役所等:1998年の建築基準法改正により、確認・検査業務が民間の指定確認機関に開放され、役所以外でも確認申請を提出できるようになりました。従来は、建設敷地の市区町村の役所の建築審査課等への提出が義務づけられておりましたが、民間の指定確認機関を利用することにより遠方の建設敷地の確認申請も近くの民間指定確認機関(全てが全国展開ではないので事前に確認が必要です。)で行うことができるようになりました。但し、民間ですので、役所への提出に比べて手数料は割高となっておりますので、ご注意ください。

4ヶ月目ぐらいから次のステップに入っていくのですが、建物の規模が大きかったり、複雑な建物であったりすると、基本設計だけで1年以上かかる場合もありますので、ケースバイケースと捉えて貰えればと思います。設計者としてもこの基本設計の期間が、何度も何度も頭にプランが巡り、一番楽しいながらも苦しい時期となります。

実施設計

基本設計がある程度完成した段階で、次のステップである確認申請提出に向けた実施設計を始めて行きます。今までは、建築主に分かりやすいような図面を書いてきましたが、ここからは建築基準法を遵守していることが分かる図面を書いていくことになります。あくまで基本設計がベースなので、基本設計の図面に情報を付け加えていくという作図作業です。採光、換気、排煙、斜線制限等、建築関係者ではない建築主が見ても「?」が連続するような図面に変わっていきますが、基本設計に従って作図していますので、ご安心ください。構造設計も本格的に構造計算をして部材の選定を確定させて行きます。建物の形が正式に決まらないと正確な構造計算が出来ないので、この時期が構造設計者にとって一番大変な時となります。また、意匠設計からは図面を完成させたいから最終的な柱や梁の大きさを教えてくださいと急かされるので、構造設計者は大変な労力が必要となります。ようやく設計図書をまとめて役所等に確認申請を提出したとしても、今度は、役所等からもあれやこれやと指摘をうけることになり致命的な変更が発生してしまった時には、全員が大慌てとなります。とは言っても設計者はそれが仕事ですので、何とかクリアするように試行錯誤を繰り返していく日々となります。

確認申請

確認申請の提出には建築主の承諾が必要です。というより、本来は、確認申請というのは建築主が提出しなければならないということはご理解ください。とはいえ建築を知らない一般の建築主が確認申請を提出するのは不可能であるので、建築士が代理となって確認申請を提出することになります。建物の規模によっては二級建築士では設計できず、一級建築士でなければ設計できないものもありますので、ある程度の設計者の区分を建築主は理解しておいた方が良いと思います。

Point

確認申請に対して建築主がすることは、
申請書の「建築主」の欄に記名押印をすること
のみとなります。

但し、前述しましたが、確認申請を提出するのは、本来は建築主であり、設計者は代理であるので、その申請書、設計図書の責任は建築主にも及ぶということを覚えておきましょう。何の申請書???何の設計図???とか気になればどんどん設計者に聞いていいですし、設計者は内容を説明する義務がありますので大丈夫です。

念のため、建築士の区分を簡単に記載しておきます。(詳しくは別の機会にお話します。)

一級建築士基本的に全ての建物の設計と工事監理を行うことができます。
二級建築士特殊建築物延べ面積500㎡未満、高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超えない、小規模(300㎡以下)な鉄筋コンクリート造や鉄骨造、木造3階建てまでで1,000㎡以下(但し平屋は面積の制限なし)の設計と工事監理を行うことができます。
木造建築士木造建築物で延べ面積300㎡以内かつ2階以下のものを設計と工事監理ができる。
無資格木造2階建てで延べ面積100㎡以下、木造以外2階建てまでで延べ面積30㎡以下は誰でも可。但し、法規・構造・性能等は建築士レベルの対応が必要。

確認申請審査中にやること

また、その間、建築主はほったらかしになるかと言えばそうでもなく、仕上げ材を決めていくという作業を並行して行っていくことになります。設計者が用意したサンプルから検討したり、設備機器のショールームに行ったりして、建物に存在する色や形などを全て決めていくことになります。確認申請は建築基準法に遵守しているかどうかの確認なので、外壁の色が白や黒やピンクというのは図面に書いてあっても特に議題にあがることなく、外壁がどんな素材で法令遵守しているのかだけ議題となります。但し、世の中には「景観条例」という地域条例があり、外壁や屋根の色に制限がかかることもあり、その際はカラーの立面図を提出し役所に承諾を貰う必要がありますので注意してください。軽井沢等に行った際にコンビニが木目調やダークカラーになったりしているのはそのせいです。

確認申請審査⇒確認申請がおりる=確認済証

この確認申請ですが、永遠に続く訳ではなく、確認審査にかかる期間は最長35日と決められています。また、構造上複雑な建物に関しては「構造計算適合性判定 (通称:適判(てきはん))」が必要となり、さらに期間が最長35日追加されます。

構造上複雑な建物とは、

  • 木造で高さ13m又は軒高9m超え
  • 鉄骨造で4階以上
  • 鉄筋コンクリート造で高さ20m超

などが該当します。

つまり、確認申請期間は最長70日(35日+35日)となります。ですが、確認申請を提出したら70日で確認申請がおりて確認済証が貰えるかというとそうではないのです。役所等は「適合するかどうかを決定することができない通知書」を逆に提出し、審査を一度止めます。これは、設計者が役所等に確認申請を提出し、受付をして、7日~10日間ぐらいで役所等がひと通り申請書と設計図書を確認し、法に適合していない箇所や情報が不足している箇所を書面等にまとめて設計者に通知します。その際に「適合するかどうかを決定することができない通知書」も通知します。そうでもしないと、指摘した箇所の修正がいつなされるか分からない状態では役所等も困りますので、当然といえば当然の行為です(建築基準法第6条第13項の規定)。

ですので、設計者はその指摘事項をクリアするために再検討して、不備であった資料等を準備して、何度か役所等とやり取りをしていくことになります。実際には、適判が必要ない物件であれば2ヶ月、適判が必要な物件であれば3ヶ月を確認申請の提出・受付が完了してから見込んで頂ければと思います。但し、複雑な物件であればそれ以上かかることも多々ありますので、建築主は設計者を信じて待って頂ければと思います。これらの作業の繰り返しの結果、確認申請がおりて確認済証が交付されます。

おめでとうございます!

確認済証が交付されれば工事に着手することができます。

しかし、設計者が行っていることは実はこれだけではないんです。

工事に着手するためには施工会社と建築主が契約する必要があるんです。

業者選定作業

ハウスメーカー系の設計施工の会社との契約でもともとスタートしていれば、最初から施工する会社が決まっておりますので、確認申請がおりれば、すぐに工事に着手できます。しかし、注文住宅系の設計者と施工者が別の場合には、施工者を選定する作業を行わなければなりません。それに、確認申請がおりて確認済証が交付されればすぐに工事に取り掛かりたいですから、その段階で施工者が決まっているのがベストです。施工者選定には、建設現場近くの施工業者や、設計者と過去に仕事をしたことがある施工業者、建築主の知り合いの施工業者、雑誌等で見かけたことがある施工業者等に声を掛けるところから始まります。施工者が決定するまでには、早くても2ヶ月程時間を要します。ですので、ほとんどの場合、確認申請を提出した段階で、施工者への声かけ及び概算見積もりの依頼を行うことになります。確認申請期間中に役所等から建築基準法等に対する指摘を受け設計図書を変更せざるを得ない状況になり、概算見積もり依頼時から設計図書が変更になる場合がありますが、その時は、後々増減見積もりを施工者に作成して頂き建築請負契約までに整理することになります。建築主の予算にぴったりあえば良いのですが、大抵の場合、オーバーすることがほとんどですので減額案等を考える必要が出てきます。すでに確認申請も提出しており、図面の修正に悪戦苦闘の日々を過ごすことになりますので、設計者にとってはなかなか苦しい日々となります。でも、それが仕事ですので、精一杯頑張るのも設計者の宿命となっております。

その結果、晴れて施工者が決定となれば、建築主と施工者の契約となります。(こちらに詳しく記載しています。)

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